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BackupHDDVDについて

「AACSをcrackした」と騒がれている当ソフトについて、現時点で理解したことを書きます。
(「BackupHDDVDって何」という人は、Engadgetの記事を読んでください)

これはどういうプログラムか

HD DVDに収録されている映像ファイルを、予め取得したTitle Key(s)によって復号化します。
作者本人も「AACS LAで公開されている仕様を単純に実装しただけ」と発言しているように、「映像が復号化できること」自体は大した問題ではないです。
それは、AACSの肝の部分が「復号化に必要なTitle Keyをどのように作り出すか」にあるからです。

その点で、このソフトは現時点では問題にはなりません。

何故問題にならないのか

「問題にならない」というのは、現時点では、このソフトが単独でTitle Keyを作り出すことが出来ないからです。
何故Title Keyを作り出せないことが重要かというと、これはAACSの仕組みを知っていれば分かります。
仕様書を読めば分かりますが、ここで簡単に解説しておこうと思います。

HD DVDの映像を復号化する仕組み

AACSによって保護されたコンテンツは、以下の手順で復号化されます。
  1. ソフトに収録されているMDB(Media Key Block)を読み取る。
  2. それぞれのデバイスにAACS LAが割り当てた「Device Key」を用いてMDBを処理し「Media Key」を得る。
  3. 「Media Key」を用いて、ソフトに収録された「Title Key」を復号化する。
  4. 「Title Key」を用いて、映像を復号化する。

これを見れば、「Title Key」を作り出せない限りにおいて「BackupHDDVD」は「問題ない」ことが分かると思います。

しかし本人は、YouTubeの映像にもあるように生のデータを抽出できたではないかというと、それは彼が再生中のPowerDVDのメモリからTitle Keyを抽出したからです。
従って、これと類似の方法で「Title Key」を持ってこない限りは、「AACSを解く」ことは出来ません。

感想

これは「BackupHDDVD」の問題というよりは、PCで次世代DVDを再生する上での根本的な問題だと思います。
一応、一定期間でKeyを更新するようなことはしているようですが、デコード段階のどこかで必ずTitle Keyがメモリ上に展開されるわけですから、これをプロセスメモリエディタで覗けば簡単に復号化できてしまいます。
例えユーザーモードでcrack対策が出来たとしても、カーネルモードで動くドライバを書くなど、いくらでも回避手段はあります。

Windows VistaがAACSの処理を「Protected Media Path」内で行うようにしたのもこういう理由からです。
ただこれはVistaでは有効かもしれませんが、XPで再生できる限りは無意味ですね。

AACSでは、運用規定に違反したプレイヤーを締め出せるように、問題の発覚以降にリリースされるソフトのMDBを、違反したデバイスのDevice KeyではMedia Keyが作れないようなものに更新するという仕掛けを持っています。
これをPC用のプレイヤーで運用する場合、

  1. crack(Title Keyが抽出できてしまうなど)が発覚。
  2. ソフトウェアにcrack対策を施すと同時に、そのソフトに対するDevice Keyを上の手順によって無効化。
  3. 新しく割り当てられたKeyと対策パッチをセットで配布。
  4. ということになると思いますが、少なくともXP上で動くソフトが原理的に全てcrack可能である以上、先に万策尽きるのはどう見てもAACS側です。

# ここではソフトにもkeyがあるとしていますが、恐らくPC上ではドライブのkeyとソフトのkeyからDevice Keyが作られるのだと思います。

Blu-rayは?

こうなってくると、Blu-rayがAACSに加えて二つも(BD+、ROM Mark)を導入した理由が分かるような気がします。
ただ、その二つにも結構問題があるような気がします。

まず「ROM Mark」についてですが、Wikipediaによると

「ROM Mark」の特長

BD-ROMの原盤の偽造を困難にする技術である。

映画や音楽、ゲームなどBD-ROMメディアに収録されるコンテンツに、検出できない一意の識別子を埋め込む。ライセンスを受けたBD-ROMメーカーに提供される機器でしか扱えず、スタンパーを入手しただけではこの識別子は書込めない。その為、ディスク原盤の非正規の作製は極めて困難とされている。

というものらしいです。
要するにWater Mark(透かし)を埋め込むらしいですが、例えば自分で撮影した映像からホームビデオを作ってBDに記録する、というようなことが可能である以上、一旦映像が復号化されてしまえば、それをそのまま記録して(暗号化しないで)売ってしまえば海賊版としては問題ないわけですよね。
ホームビデオの再生を規制することはありませんから。

これでは「元のディスクと完全に同じ」ディスクを複製することが困難になるというだけで、根本的な解決にはならないような気がするのですが、どうなんでしょうか。

で「BD+」ですが、これもWikipediaによると

「BD+」の特長

BD独自の機能である BD+ は、BDプレイヤーのコンテンツ保護プログラムが破られた際にも、BD+を使えば新たなコンテンツ保護プログラムをBDプレイヤーに導入できる機能である。

破られたコンテンツ保護プログラムをコンテンツ企業が後から動的に更新できる為、非正規に複製されたディスクの視聴は、実質的に不可能になると考えられている。尚、BD+はキーが改変されたプレイヤーのみに影響する。

というものだそうです。

ですが、一目見て分かるように、この実装には相当コストがかかることが考えられます。
というのも、プレイヤー側に仮想マシンを実装し、またこれをprogrammableにしなくてはならないからです。

例え再生専用機の問題が解決しても、
この記事(西田宗千佳のRandom Tracking - Microsoft担当重役が語る「我々がHD DVDにこだわる理由」)

この記事(同 - マイクロソフトに聞く「Windows Vistaの次世代DVD対応」)
に見られるように、PCで再生できる以上は完全に対応するのは不可能です。

DVD Forumも、両規格の統合に向けた話し合いの中でBD+などの採用を、一応検討したらしいです。が、現在の規格には盛り込まれていない。
当然特許などの問題もあったでしょう。が、私が思うに、DVD Forumは、根本的な解決が不可能であるならば、保護は必要最小限に留めてユーザビリティを向上させた方が結果的には利益になると考えたのかもしれません。
現に、HD DVDは当初からManaged CopyもMandatory(必須)にしていましたし。

コンテンツビジネスの今後

海の向こうでは消費者の権益が大層重んじられていて、コンテンツについても「Fair Use」の概念が広く浸透しています。
それに引き換え、日本で「コピーワンス」などとふざけた状況がまかり通っているのには本当に腹が立ちます。
AACSにしてもBD+にしてもコピワンにしても、どれも「違法コピー」を防ぐというのが目的ですが、(中華辺りの)商売目的で海賊版を作成する業者に対しては、いくら強固なプロテクトを施したところで無意味でしょう。
むしろ、海賊版を作れる業者が限定されてしまえば、海賊版市場への供給が減って海賊版の相場が上がり、彼らを儲けさせることにつながります。

P2Pの問題にしても、P2Pで違法コンテンツをダウンロードするような人は、P2Pが使えなくなったからといってDVDやCDを買うようにはならないでしょう。
統計がないので実態は分かりませんが、P2Pで広まることでコンテンツの知名度が上がり、逆に収益が増すという状況も十分考えられます。

著作権の有効期間を延ばすって話にしても、推進派の主張にはまるで創造的なものがありません。

私が思うに、パッケージの販売や「限定すること」を基準にしたコンテンツビジネスの寿命はとっくに過ぎていると思います。
自由に使用でき、かつ製作者にきちんと収益が入るような仕組みを作っていかないと、消費者はどんどん離れていきます。現に、CDの売り上げは既に減少傾向です。
CCCDが大コケしたのは記憶に新しいですし、マルチセッションCDにマルウェアを仕込んでいて訴訟に発展した事例もありました。

47氏ことWinnyの作者の金子氏が自身のHPに掲載していた「コンテンツの株券」システムのように、現状に即していて、かつ、消費者と製作者がWin-Winの関係になれるような仕組みを議論していくほうが、如何にして強力なプロテクトを施すか、といった議論より遥かに生産的だと思うのですが、そういった声が全くといっていいほど聞こえてこないのは、残念でなりません。

地上波によるデジタル放送が始まってHDTVがこれから普及していくと予想されますが、肝心の番組がガチガチに固められてしまっていては、消費者の期待を裏切るのは火を見るより明らかです。
これによって番組の視聴機会が減ったり、またデジタル放送対応機器の導入が遅れたりすれば、総務省の計画が狂うばかりか(個人的には相当甘い計画だと思いますが)、AV機器メーカーもTV局も消費者も損をします。
何故それが分からないのか。分かっていても認めたくないのか。
いずれにしても、一度つぶれないと理解できないんでしょうね。愚かですね。

一旦つぶしてやるべきだと思います。
ですから皆さん、家にあるテレビがぶっ壊れるまで新しいのは買わないようにしましょうw

新しいシステムについて

前述のように、いずれ新しいシステムが必要になるのは自明です。
そこで、ちょっとそのシステムについて語ってみようと思います。。。

概論とかそういうのを全部すっ飛ばして書きたいことだけ書きますが、新しいシステムで鍵になるのは「付加価値」と「製作者への意識した還元」だと思います。

前者について。
例えばある番組を作り、それは誰でも自由に見られるようにします。録画も出来ます。
その時、SD画質のものは自由に見られるけども、それをHD画質で見たいとなったときに購入するようにする。
こうすれば、面白いものだと分かった上で納得して金を出すことが出来ます。究極の試聴ですね。
更に、購入すると、例えばメイキング映像が見られるようになったり、主題歌のCD(これはダウンロード販売になるかもしれません)の割引クーポンがついてきたり、アニメであれば原画集が閲覧可能になったり……と、いくらでも付加価値をつけることは出来ますよね。
しかもインターネットを使って配信すれば、コストは最低限で済みます。
勿論、冊子やフィギュアなど、実際に形のあるものを特典にしたっていいでしょう。

後者について。
現在では、製作者に金が入る仕組みが非常に複雑で理解しにくいものになっており、例えばDVD1枚買っても、それは誰にどのくらい払ったのかが全く分かりません。
ここを、支払う金額の一定の割合を、製作に携わった人のうち自分の好きな人に重点的に払えるようにします。
例えば、自分はこの映画ではこの俳優が好きで、あと音楽も素敵だったから、自由配分の70%をこの俳優に、残りを作曲者に割り当てよう、ということが出来るようになれば、自ずと消費者がコンテンツに協力しているという意識が芽生えますし、クリエイター側の意識も高まるでしょう。
勿論、俳優などの名の知れる人にばかり偏ってしまえば、録音エンジニアなどの裏方的な職業の人が最低限の収入を得られなくなってしまいますから、配分できる割合についてはある程度の制限を設ける必要があるでしょうね。
更に、この人は特にいい仕事をしたと思えば、代金に更に「報酬」を上乗せして意思表示をするようなことも十分可能です。

また、製作者にダイレクトに代金が支払われれば、某JAS○ACなどの中間搾取団体の天下り寄生虫野郎どもの懐を肥やしてしまうこともなくなります。
結果的にコンテンツの価格が下がり、購入しやすいものになってきます。
そうすればより多くに人に買って貰うことができ、ここにWin-Winの関係が成立します。

今や野菜や肉でも「生産者の顔が見える」ことは重要な付加価値になっています。
野菜などは誰が栽培してもある程度は同じものになりますが、コンテンツではそうは行かない上に好みも非常に多様に分かれます。この性質は上手く使ってやるしかないでしょう。

と、このように、こんな素人でもこれだけのアイディアが出せるのですから、専門に研究している人は勿論、音楽が好きな人、映画を見るのが趣味の人、アニメを週に数十本録画している人、テレビがなければ生きていけない(笑)人、などなど、多くの人がもっともっと議論していくべきだと思います。



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kerio | 2016/03/27 05:12 PM

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